RIZE

cube32006-02-07

まだ論文が完全に終わったわけではないけれど、ちょいと息抜きに久しぶりに映画を観てきました。
アメリカ西海岸のダンスカルチャーのドキュメンタリーフィルム。西海岸でももっとも危険な地域に根付いているクラウンダンスやクランプダンスについて。その地域では”ソーダを買いに行くだけで殺される”という、ギャングがのさばっているような街で、子供の選択肢はまず”どちらのギャング団に入るか?”そして行き着く先は2つ”ムショに入るか、打たれて死ぬか。”そんな街で元ギャングのトミーがピエロの格好をして誕生日会にダンスをしたのが始まり。選択肢がギャングに入るか、ダンスを踊るかに変わってから、その街も変わった、という。次第に活動が広まって、ダンス人口が増えるともちろん様々な流派が生まれる。クラウンダンスは元々トミーが始めた人を楽しませるエンターテイメントとしてのダンス、クランプダンスはトミーの弟子の一部が始めたダンスでより激しく感情を露にして自分の内面に問いかけるように踊っている。その他にも50前後のチームがあって、4歳児からお年寄りはいないけれど、多くの人に希望を与え続けているという話。
で、こんな碌に解説にもなっていないテクストを読むよりも、とにかく観るべきな一本。この前のトニーガトリフの「愛より強い旅」のラストシーンもそうだったけれど、踊りが圧倒的な世界を作っていて、人の根源に触れる何かをあるように感じます。太平洋の夕陽をバックにクランプダンスの動きが黒いシルエットで激しく動くシーンなど、格好良すぎました。途中にアフリカの部族の祝祭のシーンと重ねていたけれど、そういう現代のアニミズム的なものなんだろうなと思います。絶対に劇場で観るべきです。
ちなみにですが、パリでは一足早くこの映画が上映されていたそうです。パリの中心のレアールというところに、シネコンがあって、その脇で移民のみなさんがいつもダンスを踊っていたのですが、この映画が封切りになった途端にいなくなったそうです。そして数ヶ月後に帰ってきたら、そこにいるみんなの踊りがクランプになっていたそうな。