白仏

cube32006-01-10

辻仁成の作品で、1999年のフランス五大文学賞の1つ、フェミナ賞の外国語作品部門受賞作。日本人としては初めての受賞らしい。久しぶりの小説ということもあって、楽しめたのが一点。あと、前に読んだパサッジオかな、ピアニッシモかな、正直あまり面白くなかったので、それに比べてみるとずいぶんと楽しめた。
一人の男(モデルは作者の祖父)の死から物語が始まる。全ては彼の回想シーン。ということもあって、常に死とはなにか、同時に生(性)とはなにか、ということが主題になっているのだけれど、そんな重いテーマを吹き飛ばすような九州訛り(恐らく、佐賀)の音の響きが心地よい。その文体は内容にも通ずるところがあって、「死は敗北ではない」というメッセージが掲げられている。ずいぶんとダイレクトに登場人物に語らせ過ぎている感は否めないけれど、全体としてバランスのいい作品になっていると思う。