バビロンに帰る

フィッツジェラルドの短編集、村上春樹訳。フィッツジェラルドは「華麗なるギャッツビー」を原文で読んだことがある。1920年代の華やかな時代を描いたもので、その華やかさの裏側にある、一筋縄ではいかない不安感や焦燥感が些細なところから感じることが出来る、とても人間的なものだった。今回の短編集も全体的に同様の雰囲気があるものの、アメリカの恐慌が起こってからの30年代に書かれたものなので、どちらかといえば栄華は遺物、不安は現実となってカタストロフが書かれている。5編の短編は全体的に同じ流れを読むことが出来るけれど、作品によって出来にばらつきがある。タイトルとなっている「バビロンに帰る」はもちろん「結婚パーティー」はとてもよかった。