予定調和

研究室の近くにあったのだが、今まで全く気が付かなかった洋食屋に晩飯のために入る。比較的最近に出来たお店のようで、カウンターで9席しかないような店。でも店内の雰囲気は明るくて、シェフの親父とサービスの奥さんとの距離が近い。まず入って目に付いたのがお冷や。氷をわざわざピッカーで割って出していて、空気の入っていない透明な氷。そんな氷を出す店は間違いなくうまい。和食の店ならば、付け合わせの漬け物とかお通しとかそういうもの。最も些細なものがそのお店の心意気を象徴しているような気がする。その店は研究室の人に「オムライス屋」と言われている、それならばオムライスがスペシャリテに違いない。ということで、僕のオーダーはオムライス。で、シェフの動きが良すぎる。無駄のない動きというわけではなくて、すべてはもう30年くらい前から決まっていて今日のために何度も予行練習をしてきて、いざ本番って感じでしょうか。もう目が据わっちゃってて、雑念のかけらも感じない。そんな風にして予定通りに出来上がったオムライスは、コレといって特徴のない、ごく一般的なオムライス。そしてごく一般的でありながら、生まれてこのかた食べてきたオムライスの中で圧倒的にうまい。卵のふんわり具合といい、ライスのバターとケチャップの利き具合といい、炒め具合といい、やっぱり予定通り。究極的な予定調和なオムライス。今後、頻繁に足が向きそうです。