イコノグラフィー/受胎告知

今回のイタリア旅行ではかなりの数の美術館、教会を廻って、絵を見ました。ルネサンスまたは中世の絵画が中心になりましたが、そこに描かれている内容の多くはキリスト教なりギリシア神話の知識がないとさっぱり分かりません。幸いにして僕の奥さんはキリスト教系の学校を出ていたことや美術史の勉強をしていたこともあり、その辺りの知識を叩き込まれています。以前にフランスに留学していた時は何が何だかさっぱり分かっていなかったものが、その絵が描かれた時代背景や描かれている意味内容を前提とすることで、絵画の世界が大きく開かれます。
もちろん僕は美術は門外漢なのでここでは堅苦しい議論はここでは避けるとして、とにかく面白いと思ったイコノグラフィーを少しピックアップしてみようと思います。聖人列伝ともいえるキリスト教のぶっ飛んだ人々は色々な描かれ方をしています。キリスト教の熱狂的な信者の方は気を悪くしないで下さい。

まずは受胎告知(英:Annunciation、仏: Annonciation)
キリストを身籠ったことを大天使聖ガブリエル(天使にも位があるみたいです、厳しいですね。)がマリアに伝えに来ている様子。ガブリエルには羽が生えています、天使なので。あと白い鳩から輝く光線が放たれてマリアに直撃することもよくあります。マリアは驚いた様子ですが、絵によって色々なことをしている最中だったりしますが、それぞれ言い伝えがあるのだとか、どこかで読んだ気がします。



こちらはフィレンツェのサンマルコ修道院にあるフラ・アンジェリコの受胎告知です。フレスコなのですが保存状態がよく(あるいは補修したのかな?)本当に美しい。ガブリエルの服のドレープにあたる光や翼の色などなんとも言えない美しさです。ところマリアとガブリエルが実は巨人だったのでは?と疑いたくなるほど建物に対して大きすぎる点などは、まだまだ中世的な要素が残っているのでしょうか。そういう意味での写実性はこの時代はまだまだですが、まあそもそもガブリエルの存在やマリアも居たかどうかあれですし。
背景に描かれている建築は明らかにルネサンス期のものです。ゴシック的な要素は排除されてシンプルな幾何学とアーチの広がりを留めるテンション材が描かれていますね。ブルネレスキはアンジェリコの一世代上です。
ちなみにアンジェリコはあまりにも敬虔だったそうで、涙を流さずにはこれらの絵を描けなかったそうです。




こちらもフィレンツェにあったような、ダ・ヴィンチの受胎告知。ダ・ヴィンチは本当に激ウマというか、写実的というわけではないのですが人、天使が本当に魅力的に描かれています。多くの受胎告知はアンジェリコもそうですが、左側に天使がひざまづいて右側にマリアが驚いています。こちらのマリアは書物を読んでいた最中に告知されたのでしょうか。紀元前にあのような形で本があったかは謎ですが、いずれにせよルネサンスの時代には本は巨大で重いものでしたので、専用の読書台があったのですね。
このマリアは外に居たようですが、背景の建物の扉が巨大に見えるというか、ちょっと遠近法がおかしく見えます。あるいは画面が横長なのであっているのかな??それに柱や建具枠をライムストーン積みで壁の部分をレンガ?あるいはスタッコ?で作っているのもルネサンス期の建築ですね。あれ、マリアが居たのは紀元前だったような?という素朴な疑問がよく思い浮かびますが、いつの時代もこういう絵に自分の時代の風景を当てはめることはよくあるみたいです。特に建築の様式はいつもその当時のものが描かれるような気がします。あと、背景の木がCADの添景みたいですね。

ところでマリアは処女のままキリストを身籠ったとされているそうですが、そのせいでマリアの旦那のヨゼフはいつもお爺さんとして描かれているそうです。つまり生殖機能を失っているとするために…。男としてヨゼフの悲しみを理解してあげたいと思うのと、若いマリアと年寄りのヨゼフが結婚しているといういかがわしさはないのだろうか??なんて勘ぐりたくなります。キリスト教の世界ってそんなことがたくさんあります。

受胎告知だけでこんなに書いてしまいました。他の絵はまた次回。