上原通りの住宅

ひょんなことからお誘いを受けた、上原通りの住宅。僕の先生の先生にあたる、篠原一男が1976年に設計した小振りなRC造の住宅です。恐らく建築関係者からすればよだれモノの作品でしょうが、個人宅なのでこの場に写真を掲載するのは止めておきます。写真を見たい方は個人的に連絡を取って下さい。
で、実際行ってみたところ、いつも写真で見るような空間の厳しさはそれほどでもなく、思ってたより尖ってなくて、柔らかい印象。というのも、1976年ってことはもう築30年を過ぎているわけで、生々しい架構の肌理は後退していて、人の生活の臭いが移ったからかもしれません。
また、ちょっと話題に出たのですが、篠原作品のRCの住宅のわりには少し小振りなのがこの作品の傑作たるゆえんかも知れません。というのも、この近くにある「上原曲がり道の住宅」といい、第2の様式の一連の作品、第3の様式の成城の住宅、愛鷹裾野の住宅などは総じていわゆる小住宅ではなくて、今の感覚からすれば豪邸の部類です。これらの住宅のRCの架構は身体のスケールを大きく包み込むような形而上学的な存在感を感じさせます。(この中のいくつかの住宅も実際に見ているので!)それらに比べてこの住宅はRCの大仰な架構のわりには空間の容積はとても小さい。そのことが人の身体に架構が直接的に働きかけるような感覚を感じさせます。とても身体的なもののあり方です。屋根を支える架構が人に近づいてくるこの感じは、むしろ初期の「地の家」だとか「からかさの家」を訪ねた時に抱くそれととても近かった気がします。