Dreaming of Tomorrow

東京都写真美術館へ。帰国してから、恵比寿に行っていなかったので2年ぶりくらいだろうか。僕はそこにいったのは初めてで、なかなか良い場所にあるなあと感心する。写真展3つと映画がやっていて、とりあえずDreaming of Tomorrow展を観賞。
19世紀末から20世紀頭に架けてのアメリカの風俗を主な対象にしたもの。人権運動が盛んだった頃のようで、とりわけ子供の人権を守るために、世の中に不当に労働を強制させられている子供を写したものが多い。カメラマンは政府からの依頼を受けて撮っていたもので、プロバガンダ色の強いものだと思う。それらの写真を観ていると、被写体の顔つきが生っ粋の白人、イギリス系でないことに気がつく。子供の多くはユダヤ系の顔つきをしており、その頃の階級社会が人種に因っていることが伺える。
あるいはニューヨークの都市の変遷を記録することが目的の写真もあり、それらはパリにおけるアジェなどの写真家をきっかけとしていたようだ。恐らくパリとニューヨークの街の変貌のしかたの差は、パリがオースマンによって街区ごと、都市の構造を外科的手術さながらに変えられたことに対して、ニューヨークのそれはもう少し緩やかで街区は保存されつつ、低層の木造建築が一気に高層化されるような手法だったようだ。(あくまでも今日の写真から推測したことなので、本当のところはわかりません。)僕が実際にニューヨークに行ったことがないので、その写真から生々しい実感というのを得ることは出来ないのだけれど、20世紀前半あたりからニューヨークという都市は本質的には変化していなくて、あるいは変化する柔軟性はグリッドシステムによってもはや残されていなくて、(誰かの言い分をなぞるわけじゃないけれど)あとは固定化する、つまり廃虚に向かっていくのみなのかなって思いました。いくらテロでワールドトレードセンターを破壊されたからって、本質的な都市の構造は変わらないわけで、跡地にいくら計画案を出してもにっちもさっちもいかないのは何となく理解できる気がする。その点パリの都市の動きというのは、ニューヨークのそれとは違う。ある意味では東京と似ている節もあって、歴史的な建造物の並ぶ地区は保存されているけれども、常に市内のどこかで新しい開発が断続的に続いていて、それらは都市の構造とも常にコミットしながら変遷していっている。今工事しているところでは、13区の川沿い周辺はそうだし、これから中心のレアールも変わるみたいだし。東京は一通り動きがなくなったけれど、なぜだろうか、まだまだ動く気がする。