上海建築事情

誰もが知っての通り、現在の中国は建設ラッシュだ。上海に関しては2010年の万国博覧会に向けて着々と工事が進んでいる。僕のパートナーのルルは学部時代はエンバイロメンタルデザインをやっていたものの大学院から建築に転向した。つい先月くらいまで事務所でバイトしていたらしくて、そのバイトってのがすごい。日本における事務所でのアルバイトは模型作りだのプレゼンの手伝いだの、要するに雑用に限りなく近いともいえる作業で実際にデザインさせてもらえる機会は少ないが、彼女たちはプロジェクト契約でバイトするらしい。しかも模型などではなくて、実際のデザインを出来るのだ。模型やCGというのは元から外注するのでその必要はなく、本当に図面を描く人間の人手が足りないらしい。しかもその収入で彼女は生活しているそうだ。大学院に入ってから一切親の仕送りは受けておらず、学費、生活費を自らまかない、最近ではPCとデジカメを購入したらしい。新卒で一番稼げる学科と言うのは建築学科らしくて、医者や弁護士よりも給料が良いらしい。とはいえ、平均月収が1万円のところが、建築新卒だと3〜4万円くらいという。ある程度出来る人だと10万円くらいはもらえるらしい。事務所は大小あるものの、扱っている物件はほとんどがかなり大規模なもの。確かに戸建の住宅なんぞは見なかった。建築現場は全て高層ビルだといっても良いくらいだ。だから彼女達はとにかく大きい事務所に入って、たくさん給料を稼げるのが就職先として良いらしい。だってどこに入ったって、仕事の質は変わらないのだから。
そんなこともあってか、現在の上海のデザインの質はかなり低いといっても良いんじゃないだろうか。70年代の日本の繰り返しと見ても良いかもしれない。ポストモダン的なデザインがそこらじゅうに散らばっている。新しいデザインを考える力も時間もないから、そうならざるを得ないのか。
そんな中で外国人建築家は要するにスター扱いのようで、中国人のデザインよりもかなりいい金額の設計料が取れてしまうらしい。上海の倉庫街に事務所を構えているイギリス人建築家の事務所を訪ねた。そこは倉庫を改装したもので、とはいっても殆ど手は加えられていないで、そのままの荒々しさがめちゃかっこいい。住みたくなるし、是非働きたいと思う建物だ。こんな風に賃料の安い倉庫を改修して事務所にする建築家は最近多いらしい。