裸足の1500マイル

ここ最近の中で最もいい映画でした。人類の一番おぞましいところが描かれていました。オーストラリアの映画で、1970年までのアボリジニー政策が題材になっています。映画のストーリーはノンフィクションなので、映画が良いというよりも扱っているネタが良いといえるのかもしれません。現在で言うなればアメリカの対イラク政策、あるいはロシアにおける対チェチェン。白人主義のオーストラリア、南アフリカ、戦前の日本が行った中国政策。それ以前にも幾度となく行われてきたこと。手塚治虫によれば日本国家の起源とされる倭の国ってのも、クマソの歴史を踏みつぶしてのこと。現在の倫理観が曲がりなりにも人道主義的見地から成立していると考えると、やはり過去のことに目は瞑れても、現在行われているものは悲しみを感じます。
前置きがなかったけれども、この映画によるとアボリジニーと白人の混血の子供を当時の政府が強制的に収監して、奴隷や使用人として教育(白人の言い分)していたそうです。こんな台詞がありました。「アボリジニーの彼ら自身の野蛮な習慣を取り除くことで、救うのです」ブッシュの言い分と全く同じですね。ちなみに1/8くらいの血の薄さになれば、アボリジニーの特徴は消えるのだとか。
映画の話としては、その収監された施設から1500マイル離れた故郷に追跡されながらも帰る、というもの。映像の作り方もものすごく良く出来ていて、砂漠の朝焼けを撮っていた構図とかはバランスが見事。美しいの一言。また全体的に暗い絵が彼らの歌というか音楽にかなりはまっていました。
時事的な内容も含め、映画としての出来映えもかなりのものなので、未だ観ていない方は是非お試しになってください。