projet の補足

「記憶の地図」を描くというところで、僕のスケッチと周りのみんなのスケッチを観ていると明らかに差があるのに気付きました。僕にとってきっと印象的な風景、記憶というのは何もないだだっ広い農地と地平線だったりして、その風景を描いていたんだけれど、他のみんなはもうちょっとオブジェクティブなものを描いていた。敷地にあったトンネル、サイロ、墓地、教会etc...やっぱり日本にはない風景なのでそんな絵を描くのだけれども、みんなにしてみれば極めて当たり前すぎる風景だったようで、1人の先生を除いてはあまり興味を示してくれなかった。
ちなみに僕もいくつかのオブジェクトは描いていました。サイロ、工場のような建物、柵。その先生は僕が描いていた「柵」を観て、「フランスはバリアーばっかりでしょ」なんてことを言っていたけれど、まさにその通り。パリに来てから思っていたのが、街路にそってずーっとバリアーがあるようなかんじ。ほとんどの建物は街路ギリギリに壁面を連ねて建っているし、公園にでさえバリアーがはってあってアプローチを限定している。確かにパリは町並みが揃っていて美しいかもしれないけど、同時に街路と建物の境界にはっきりパブリックとプライベートをわけることによる、窮屈さも感じるところです。
あまりよく考えらてないけど、思うにフランスにおけるセキュリティーがすべてゲーティッドすることで成立しているのかなと。建物に入る時は街路に面した1つめのドアー、次に各階段ごとに2つめのドアー、そして玄関先のドアーと2重、3重にもゲートがあって、パブリックからプライベートまでグラデーションをつくっている。各建物ごともそうなのだけれど、パリの場合は地域によっても相当居住者の人種が違う。ゲーティッドコミュニティーというのがあるけど、パリの場合は郊外に大規模な低所得者層対象の集合住宅が大量に建てられていて、必然的に移民など所得の低い人がそちらに流れるようにされている気がして、そのあたりが地域レベルのゲート化でしょうか。日本だとデザイナーズマンションなんていう建築家のつくる集合住宅は高所得者向けだけど、パリでは建築家の仕事は郊外の低所得者向けが多いです。まん中の家賃の高い地域はだいたい政府によって建物が保護されているところですから。ということでとにかく、パリに来て建物単体よりは都市とか外部空間に発見があるのではと思っています。だからペイサージュのプロジェを選んだっていうのもあります。ちなみにゲート化でセキュリティーが成立していると書いちゃったけど、あくまでもプライベートなスペースの話であって、パブリックスペース(とりわけ地下鉄など)に関しては監視カメラの数は多いし、がたいの良い警備員が同じくがたいの良い犬を連れて、日々監視に励んでいます。正直、犯罪者よりこの人達の方がおっかない気がする。