ワークショップ

まずは最初にワークショップの様子を。一応これがメインの目的なので。
僕らが一緒に作業した人たちは同済大学という上海では随一(?)の大学の建筑学大学院1年生の面々。つまり僕達と同じ学年の人たち。プログラムはその大学の中心に位置する敷地の既存の建物のリノベーションおよび新築。学生会館をつくれってことらしく、いずれそれはリアライズする。ちなみにこの大学には4000人の学生がいて、その全てが寮生活。その寮にはシャワーはなく、その敷地内に大浴場があって、みんなそこに浴びに来るという、一昔前の日本状態。彼らは僕らが訪中する一ヶ月前から設計を始めていて、その各自のプレゼンを聞いてからパートナーを選ぶ。僕は3DMAXを使いこなし、設計もかなり進んでいる女の子とペアになった。ルルという名前の女の子。まずは彼女の話をじっくり聞き、そして根本的に案の変更を迫る。とりあえずは僕のペースに彼女を乗せることからが全ての始まりだった。僕のポートフォリオを見せてどの程度僕が出来るかも明かしながら、とにかく戦略的にこっちのぺースに引き込むことが大切だ。特にお互い母国語で話しているわけではないので、絵がいかに重要かはフランスでも学んだことだ。そんで僕らの場合はうまいこと彼女とやっていくことができた。
僕らの案には特に一言で言えるようなコンセプトはなかった。設計の進め方として、2週間の短い期間でひとつの形をつくるのだから、ひとつのシステムを設定してそれを細部で調整するようなことを頭に浮かべた。設計与件として、既存建物のストラクチャーだけ残すことになっていたから、では新しいストラクチャーのシステムを一つ作ることだけで大枠を済ませてしまおうという風に考えて、とにかくあとはそれをブラッシュアップすることにした。
僕らの引率の教授の安田先生はポーラ美術館を設計した建築家。元日建の大御所だ。彼の設計論として、各トピックを完全に独立させて考え、解決し、それらを重合させた時におこるものごとがゲームであり、建築の面白みだと考えている。例えば今回のワークショップでは、「動線」「機能」「記憶」「ランドスケープ」「大学内の位置付け」などなど、これらを独立させて解決して、あとは結果はゲームだよ、って考え方。で、今回はこれに従って設計を考えたわけだけれど、僕らの場合はそれらをリンクさせるように論理を組んだつもりです。
「まずは上海全体がそうなんだけれど、自転車がやたらと多い。まともに安心してあるけやしない。とにかく敷地内に自転車を入れないようにしよう。で、その敷地輪郭に60cmの段差を設けて、自転車を締め出す。その土を敷地の中心に盛る。その小さな丘は隣の庭園の丘と連続して景観を作る。そこにフラットな屋根を架けてインテリアのスペースが出来上がる。高低差のあるグラウンドとフラットな屋根の間には高さの違えたスペースが出来るので、そこに機能に応じたスペースを与えていく。そうするとインテリアのスペースは分棟形式に近い形になり、その間に細い動線のスペースができる。そのパサージュは現在、上海内でどんどん壊されていく古くからの路地裏のスペースのようである。」
ってな具合に、いくつかのトピックをストーリー形式でリンクさせていくことに設計の楽しさを僕自身感じていました。理想としてはこれがリング状になって複雑なトートロジーを成せば、一番おもしろいなあなんて勝手に思ったりしています。やはりメタにメタを重ねる思考法はいずれ形而上学的なモノに行き着かざるを得ない気がしていて。ツリー構造ですね。1対1のトートロジーはもちろんただの矛盾でしかないんですが、それが高次化されることである種の論理が出来ていると考えていいのかな、なんて。今回の設計ではそんなことを考えていました。
そのレベルで考えていたって事は、やはり今回はなかなか僕自身、身体的な次元で取り組めていないってことで、反省するべきところですね。