人質に関して

福田官房長官が人質事件に関して、彼らの救出費用をある程度負担してもらうなんて発言をしたそうですが、それは是か非か?日本の世論としては、彼らの無責任な行動に対して怒りの声が殺到しているようですが、僕はそれらの批判もあまり正当なものではないような気がします。
まず救出費用に関しては彼らに払う義務があるとすれば、パリに住んでいる僕にもなんらかの税金(例えば海外身体保護税だとか)を払わなければ論理的におかしい気がします。邦人保護は外務省の一つの重要な職務、パリに住んでいる僕は例えばなんらかのトラブルに巻き込まれたりしたら在仏日本大使館にお世話になるだろうし、そうでないにしろその予防だのトラブルにあった時の準備というか待機に相当な費用が税金から捻出されています。そのおかげで海外にいる僕らの身はある意味で安全を得られているわけだし、それがイラクで誘拐にあったからって費用を請求するのはどうも腑に落ちない。だとしたら、今僕がここで誘拐にあったとしても救出費用は僕自身で払わなければならないし、日本で誰かが誘拐にあったとしてもその費用は自身で払わなければならないということになります。「イラクが危険を承知で行って誘拐にあうのは自己責任だ」なんて「歌舞伎町が危険で...」というのと変わりがないわけです。危険度に関わらず、邦人の身体の保障をするのが日本の国としての役割です。そのために税金を払っているのではないでしょうか。僕は自身で払っている立場ではありませんが。
で、「わざわざ危険な地域で活動するNGOの人間、ジャーナリストは自己責任で」という論調はさらに?です。例えばジャーナリスト。現地に自分の足で赴き、自分の目で事実を確認し、記事を日本に伝えるというのは、現在の諸々がアメリカ化する日本には殊更、重要なことのように思えます。じゃないとしたら誰が今のイラクの状況を伝えるんでしょうか?アメリカ経由の情報だけで事実認定する危険は誰でも承知のことだと思いますが、とにかくメディア(特にTVですよね、ネットはこんな風にある程度好きなことが書けるし)によって一元化されやすい情報を、多角的に捉えるには彼らの仕事は必要だと思います。NGOも下手な正義のヒーロー気取りに、日本にいると目に映るかもしれません。でも少なくとも家でTVを観て文句を言っている人や、新聞を読んで机上で議論している人よりも、僕よりも、イラクの状況にリアリティを感じて行動しているのは事実じゃないでしょうか。そんな彼らはよっぽど僕らより倫理的であると思います。確かに誘拐なんかされなきゃ良いんですけど。
あと最後に一番腹立たしいのは、政府の対応です。明らかに議論の軸をずらしていますよね、人質になった人が再び日本政府に人質に取られているかのように見えます。彼らをスケープゴートにして、自衛隊派遣(これも「派兵」とはいわないですね、そういや)やらイラク問題そのものの世論を別方向に向けている気がします。そもそも自衛隊イラクで何をしているんでしょうか?平和維持活動って具体的になんなんでしょうか?だったら最初からNGOの活動を支援して、誘拐防止などが彼らの仕事の一つでもあるんじゃないでしょうか。彼らが結局、無事に取り引きもなく解放されたところを見ると、自衛隊よりよっぽどイラクの役に立っているんじゃないでしょうか。

いろいろぐだぐだ書いてみましたが、みなさんはどんな風に感じていますか?パリでTVなどは一切見ていない状況で、ネットからの情報を頼りに感じたことを書いてみたんですが。是非、たまにはコメントを残してみて下さい。