フランスの建築家と現場

以前にも書きましたが事務所で仕事をしていて、一番困るのが現場のルーズさ。リノベーションの現場でもとの建物を測量しない、既存の建物の図面が残っていたとしても相当古い、かつ図面通り作られていない。そんなことがしょっちゅうなんですけど、それを裏付ける事がありました。
「フランスでは建築家が現場に行きたがらない。」これです。なぜかというとミスがあったら監督責任を負わなければならないからだそうです、相当厳しく。そもそも設計料のほかに監理料も報酬としてもらっているので、責任を取るのは当然かと思いきや何やら違うらしいです。設計図を描く、図面を現場に引き渡す、とここまでで設計料分の仕事は終わり。監理業務はちょくちょく現場に足を運んで監理する、ということではなくて工事の区切りで検査をするのが監理の仕事。それらをチェックしといて全ての工事が終わった時に、まとめて図面通りに出来ていない箇所を指摘してやりなおすらしいです。それ以外のときに現場に足を運んで、指示したりすると、その最後に出来上がった時にミスがあれば「途中で建築家が来て、いろいろ指示をして、結果ミスがあった。」という、始末になってしまうわけです。その費用はもちろん建築家が持たなければならないようです。僕には不条理に思えますが。
その結果的には工期は長くなるわ、総工費はあがるわ、管理しないので施行は雑になるわ(こちらの職人は職人としての誇りは日本と比べてない、とのこと)で、いいことなしに思えますが、建築家はとにかく責任を転嫁されないためにも現場に足を踏み入れてはいけないそうです。
ちなみに現場ではそれを良いことにか(?)、図面にはない所を工事してしまい、逆にそれにあわせて僕が図面を描き、設計をし直すというイタチごっこが続いています。やはり建築家でやってくには、設計ができれば良いってもんじゃないと思います。現場のコントロールがいかに大切か、身にしみる日々です。